芸術作品の修復 1
ただ古典技法を習得したいが為に、アカデミアで修復の授業を受けた私。
この修復理論というやつ、修復家になるわけでもなし、取っつきにくくて、こんなの一銭の得にもならないよなぁと思っていたわけです。
でも、これを勉強出来て良かったと、今は本当に思います。
ミニアチュールの作品 「ロンド」と「ノクターン」
多くの人は、修復とは"壊れているものを元どおりに戻すこと"と思っているのではないでしょうか?
そういう間違った概念によって、大切な文化財がダメージを受けている場合があります。
イタリアの美術品の修復技術は超一流ですが、それには基盤となる理論(理念)に基づいて行われています。< br />
イタリアの修復家・美術史家であるチェーザレ・ブランディ(1906-1988)
http://www.sangensha.co.jp/author/author-BrandiCesare.htm
がその理念を確立しました。
4点にまとめています。
1. 識別 La riconoscibilità
2. 可逆性 La reversibilità
3. 適合性 La compatibilità
4. 最小限の介入 L'intervento minimo
つまり、わかりやすくいうと、
1.原作と修復したところの違いが識別できること。
2.介入した場所が将来別のより良い修復方法が見つかったときに、取り除けること。
3.修復した場所と原作が調和していること。
4.そして修復の必要最小限の介入。
です。
これって難しく言ってますけど、良く考えると、文化財とその作者へのリスペクトに溢れているのです。理論・理念というより哲学というものに近いような気がします。
次回もっと例をあげて詳しく説明します。(続く)